カタブツ竜王の過保護な求婚

「すごくすごく厳しかったんです。確かにわたしは不出来だったかも知れないですけど、あんなに厳しくしなくても、ちゃんと教えてくれれば、ちゃんとできる……はずなんです」


 最後は自信がなくて、少々頼りない言い方になってしまった。と同時に、冷静になってきたレイナは、熱くなりすぎていたことに気付いた。


「えっと、あの……話がずいぶん逸れてしまいましたが、夫人に出身を訊ねたんです。すると、スジラムだと答えてくれました。たぶん本物のモレト男爵夫人の出身地なのでしょうが……故郷のお話をお願いすると、まるで本に書かれている事そのままを読み上げるような説明で、全く愛情も郷愁も感じられなかったんです。それに……」

「それに?」


 何か言いかけて口をつぐんだレイナを、カインは優しく促した。
 言うべきかどうかレイナはわずかにためらい、結局口にした。


「手紙を……カイン様に出しても、なかなかお返事がいただけなくて、何かあったのではないかと。アルクネトから流れてくる情報もあまりに少なくて……だから、騎士を直接……」


 手紙の返事をもっと欲しかったと、わがままを言っているように思われないか心配したが、隣に座ったカインは身を屈めていきなり一度キスをした。


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