カタブツ竜王の過保護な求婚
「それも気にしないでくれ。計画に大きな狂いはなかったんだから。逆に同情を買うことによって上手く騙せたようだ。そのうちフロメシアの先代国王と手を組んだとの情報を得ることもでき、私たちは囮に釣られた振りをして、裏をかくことにした。まあ、アルクネトには素直に私が行ってもよかったんだが、遊学をしたことがあり、土地勘のあるレオンの方が、事を治めるには適しているだろうって話になり……あまり面識のない私よりも新大公も安心するだろうと――」
「あ、あの、カイン様とアルクネトの大公さまは幼馴染みではないのですか?」
途中で話を遮るのは失礼だとわかっていたが、訊かずにはいられなかった。
てっきりアルクネトの新大公がカインの初恋相手だと思い込んでしまっていたが、カインの反応を見ると、どうやら違うらしい。
「私と大公が? いや、違う。それはレオンのことだろう。レオンは大公がこの城に滞在しているときにはよく遊んだらしい。私は遊学中だったからよくは知らないんだ。私と大公は、数回顔を合わせたことがある程度だよ」
「……カイン様は、アルクネトに遊学したことはないのですか?」
「ああ。先ほども言ったが、それはレオンだ。私たち王子がどこに遊学しているかは基本的に秘密だから、適当な噂が流れる」
「そう、だったんですね……」
レイナの体からどっと力が抜けた。そして心がふっと軽くなる。
確認もしないで、噂に振り回されるなど大馬鹿だ。