カタブツ竜王の過保護な求婚

「レオンの居場所もほとんどの者が知らない上に、容姿も私とよく似ている。そのことを今回は利用したんだが……。この季節、南部地域では風が吹き荒れるから、頭も顔も、全身をローブで覆っていても怪しまれないからな。ただ頻繁に手紙をやり取りすれば気付かれてしまう可能性がある。それでレイナには前もって書いていた手紙をレオンが時期を見て送ってくれることになっていたんだ。だが、遠回りして届くレイナからの手紙を読むうちに堪え切れず、変化して帰ろうと何度も思った。しかし、それでは今までの皆の苦労が全て無駄になってしまうかもしれない。そうフィルに諭され、せめて手紙の返事だけでもと書いたんだ。戻ったらきちんと説明して謝ろうと。そして、今度こそはじめからやり直してほしいと頼むつもりだった。だから待っていてほしいと……」


 優しい口調が次第に苦いものへと代わり、カインの顔から笑みが消えた。


「もうすぐ終わると、終わらせられると傲慢にも思っていた。レオンからも父上からも、全て順調だと聞いていた。だから、レイナの近衛騎士が直接手紙を届けに来たときは驚いたし、読んで肝を潰した。父上はモレト男爵夫人のことは知らせて来なかった。ということは、気付いていないのだと。怖い思いをさせて、本当にすまなかった」


 改めてレイナの瞳を真っ直ぐに見ると、カインは謝罪した。
それから少し表情を和らげ、穏やかに続けた。


「それに、たくさんの機転を利かせてくれて、ありがとう」

「い、いえ……」


 カインの優しい言葉に、胸が熱くなる。

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