カタブツ竜王の過保護な求婚

 するとカインは気まずそうな顔になり、それから一つ咳払いをして真剣な表情に戻る。


「その……竜人はくどいんだ」

「くどい?」

「愛情表現が……。それに独占欲も強いし、一途すぎるところもある」

「一途すぎる……? ですが、殿下には初恋の方がいらっしゃると聞きました。ひょっとして、私と結婚しなければならなくなったために、その方を諦められたのですか? でしたら無理して私を――」


 レイナの言葉はカインのキスによって続けることができなかった。
 今朝起きたときには、昨夜のキスは夢のようでふわふわしていた。
 だがやはりあれは夢ではなかった。

 そう思えるほどにはっきりと記憶がよみがえってくる。
 座っていてよかった。でなければ、立っていられなかっただろう。
 抱き寄せられているのに肘置きに阻まれて二人の距離を縮められないことがもどかしい。


「――私の初恋相手はレイナなんだ」

「そんな嘘は――」

「嘘ではない。王家では男子はある程度の年齢がきたら遊学と称して旅に出る決まりのことは聞いた?」


 レイナが頷くと、カインは微笑んでから続けた。


「それで私はこの大陸一の豊かさを誇るフロメシア王国で学ぶことにしたんだ。ただ……あの頃の私は傲慢な子供だった。自分の力を過信して、フィルの真似をして鳥に変化し空を飛んで移動したりと楽をしていたからな」

「鳥にも変化できるんですか?」

「ああ。いくつかの種族にはできるが、今はめったにその力は使わない。過ぎる力は溺れるもとだからな」


 竜人という種族自体をレイナは今回初めて知ったのだが、その力には圧倒されるばかりだった。 


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