カタブツ竜王の過保護な求婚
7
寝支度を整えたレイナは、寝室の窓から猫の爪のような薄い月を見ていた。
そわそわとした気分に合わせて、柔らかな絹地の夜着がふわりと揺れる。
今夜もカインは訪れてくれるかもしれないと、期待と不安でどきどきして落ち着かないのだ。
昼過ぎにしばしの幸せな時間を過ごしてからカインとは顔を合わせていない。
やはりかなりの多忙を極めており、夜の食事も執務室でとったらしい。
(こういう時、よくできた妻なら、お夜食とか差し入れたりするのかな……)
とは考えてみたものの、どうすればいいのかわからない。かえって邪魔をしてしまってはと躊躇してしまう。
レイナは知らず知らず、小さく息を吐いていた。
今回の騒動も着々と処理が進み、あと数日もすればまた平穏な日々を過ごせるだろう。
義父であるラゼフ王も思っていたような人物ではなく、王妃と共にレイナを家族として歓迎してくれていた。
夫のカインからの愛情は奇跡ではないかと思うほどで、レイナは本当に幸せだった。
それなのに、どうしてもため息がこぼれてしまう。もっともっとと、贅沢にも望んでしまう。
レイナは再び頼りなく輝く月を見上げた。
「――何か羽織った方がいい。風邪をひく」
突然後ろから声をかけられて、レイナはびくりと肩を縮めた。
いつもカインは物音ひとつ立てずに現れる。