カタブツ竜王の過保護な求婚

 まるで手のかかる子供ようで、恥ずかしさに小さな声しか出なかった。


「いや、もう少し話がしたくて……」


 穏やかに微笑んだカインは、わずかにためらってから続けた。


「――ずっと忙しなくて、一番大切なことをきちんと伝えていないから」

「……一番大切なこと?」


 もう十分すぎるほどに気持ちは伝えてもらった。
 他に何だろうと首を傾げたレイナの足元にカインが跪く。


「この先、まだまだ安定しないこの国で苦労をかけるかもしれない。だが私はもうあなたを手放せない。愛しているんだ。だから、レイナ……どうか私の妻となって欲しい」

「カイン様……」


 驚きのあまり言葉がそれ以上出てこない。
 それでも喜びが心を、体を満たしていく。


「今さら……遅かっただろうか?」


 不安げなカインの声にはっとして、慌てて首を振る。


「いいえ、いいえ! 嬉しいです! わ、私は、すごく……嬉しいです」


 琥珀色の瞳から涙がぽろりとこぼれ落ちた。
 それは昨日とも昼間とも違う、幸せの涙。
 カインが涙に濡れた頬に手を伸ばし、優しくぬぐう。
 そして、体を起こし柔らかな唇にキスをした。


「好きだ」


 吐息ともつかないかすかな低い声。
 レイナの体に甘い戦慄が走る。頭がくらくらして、上手く考えられない。
 やはり風邪を引いてしまって、熱が出てきたのかもしれない。

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