カタブツ竜王の過保護な求婚
レイナにとってはお付きの者たちへの心配の他には問題も特になかったのだが、アデル夫人は国境を越えてから特に期限が悪くなっていた。
おそらく国境を越える時のちょっとした悶着が原因だろう。
迎えに現れたユストリス王国の一団が、花嫁行列を守る騎士たちの入国を拒んだのだ。
結局はレイナが判断を下し、宮殿に引き取られてからレイナの側に従ってくれていた近衛騎士――面倒を見てくれた子守りとも言うのだが、その五人を残し、他の騎士たちは引き上げることになった。
いくらユストリスの国力が強大であっても、ここでわざわざフロメシアとの同盟を反故するような真似はするまい。
少なくとも身体的に危険が及ぶことはないだろう。
そう考えたレイナの柔軟な判断に気付いてか、ユストリス側の代表者であるフィルは満足げにうなずいていた。
ただ荷運びの者たちも大半は騎士たちと共に戻ることになり、レグルが持たせてくれた花嫁道具はユストリス国側の者たちが引き受けることになったのだが――。
フロメシアの人間たちが数人がかりで引いていた重たい荷車もたった一人の獣人だけで引いている。
レイナはさすがだなと思ったのだが、アデル夫人は全てが気に入らなかったらしい。
とはいえ、この旅もようやく終着点に到着したのだ。
夫となる王太子といよいよ対面することになると思い、レイナは膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめた。