カタブツ竜王の過保護な求婚
危うく皆を置き去りにするところだった。しかも出迎えてくれた人たちを無視するなど、かなり失礼である。
しかし、そのやり取りを察したカインがわずかな苛立ちを見せて口を挟んだ。
「姫君は長旅でお疲れでしょう? 皆への紹介と挨拶は後ほどとして、今はひとまず用意した部屋にてゆっくりと休んでいただきたいのです」
「そのようにありがたいお申し出をいただき、感謝いたします。殿下、ありがとうございます」
レイナが膝を折って礼を述べると、アデル夫人は嫌悪の表情を浮かべつつもそれ以上は何も言わなかった。
この国の王太子であるカインにもの申すことなどできる訳がないのだ。
レイナは心軽くカインと共に城内へと入っていった。
後ろにノーラやアンヌが心配そうな面持ちで続く。
「驚きました。まさかこんなに早く、殿下にお会いできるとは思っておりませんでしたから。でも嬉しい驚きですね!」
こうしてわざわざ迎えに来てくれ、レイナの体を気遣ってくれる。
心配していたことも杞憂ではないのかと、レイナは浮かれた。
言葉通り本当に嬉しそうに微笑むレイナに面食らったのか、カインは何も言わずに琥珀色の瞳をすっと逸らしてしまった。
それでも気にならない。
レイナにとっては幸先の良い始まりに長旅の疲れもすっかり忘れていた。