カタブツ竜王の過保護な求婚

 レイナは浮き立つ気持ちを抑え、これも最後だからと神妙な面持ちで夫人のお説教を待った。
 すると、初めて見るような優しい微笑みを浮かべた夫人は、レイナへ手を貸して椅子へと座らせた。

 訳がわからないままレイナが見上げると、夫人はまた一つ咳払いをする。
 いつものように背筋は真っ直ぐ伸びているが、その両手はお腹の前で固く結ばれ、心なしか顔も赤い。


「姫様は、この短い期間によく学ばれたと思います。まだまだ足りないところもございますが、それでもまあ、初めに比べればずいぶん良くなられました」

「……ありがとうございます」


 褒められている気はしないが、きっと褒められているのだろう。


「この先も、わたくしが指導させていただいたことをお忘れにならず、努力なさればきっと、素敵な妃殿下となられるでしょう」

「……頑張ります」

「それでは最後に、花嫁として、妻としての役目に対する心構えについてご説明いたします」

「は、い……?」


 今までも事あるごとに、繰り返し妻としての心構えを厳しく説いていたのではないか。
不思議に思ったレイナの返事は、頼りないものとなってしまった。


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