カタブツ竜王の過保護な求婚
「……痛むのですか?」
「そうですね、恐れてしまうのは仕方ありません。特にお相手があの方では、その先もずっとおつらいかもしれませんが、こればかりは義務なのです。姫様が嫌だとおっしゃれば、殿下のご不興を買われることになりますからね。それどころか国同士の問題に発展してしまうこともございます。どうか心してくださいませ」
「……わかりました」
ほんのわずかな間を置いて、力強くうなずいたレイナにアデル夫人はほっと息を吐いて安堵した。これで最後の仕事を終えた、と。――が、それは大きな間違いだった。
今年十七歳になる姫なら、男女の秘め事については当然知っているだろうと、夫人はそのつもりで話を進めていたが、何も知らなかったレイナにとっては未知なる夜に対して、さらなる不安を抱いてしまっただけだった。
ただ、「殿下のご不興を買う」との夫人の言葉に反応して、レイナはうなずいたのだ。
しかも、国同士の問題に発展するなど、とんでもないことなのだから。