カタブツ竜王の過保護な求婚
美しい紅玉にカインの心遣いを感じ、レイナは嬉しそうに顔をほころばせた。
式を見守っていた者たちは、平和の象徴とされる樹木の小枝で縒られた葉冠に、改めてこの婚姻の意味を悟って、喜びのため息を漏らす。
わずかに頭を下げたレイナの細い首に、カインがネックレスを留めてやり、小さな頭に葉冠を載せた。
先に指示されていたのか、結い上げた髪を飾る白い花は、青々とした葉冠を引き立たせている。
純白のドレスの胸元で煌めく紅玉は、まるで小さな太陽。
しかし、何よりも美しいのは、初々しく頬を染めた花嫁。金色の髪にも青い瞳にも劣らぬほどに、艶やかに輝く栗色の髪、澄んだ茶色の瞳はあたたかな大地を思わせた。
今度は感嘆のため息をついた皆の前で、カインは柔らかな頬に優しく手を添え、そっとレイナに口づけた。――瞬間、レイナは驚きに目を見開いた。
キスは手順にはなかったはず。だが周囲の者たちの様子からして、予定外だったわけではないようだ。
それでもレイナにとって不意打ちとなるこのキスは、ちょっとした混乱を引き起こした。
なぜなら、初めてのキスだったから。
何か失敗しなかっただろうか。それに他にも知らない手順があるかも。
カインがその混乱を察したのか、小刻みに震える手を大きな手で包み込んだ。すると、レイナの体からふっと力が抜ける。
(もう大丈夫。だって、カイン様がそばにいてくださるのですもの)
落ち着きを取り戻したレイナは感謝の笑みを浮かべて見上げたが、カインは目を細めてそっけなくうなずいただけだった。