カタブツ竜王の過保護な求婚

(……眠い)


 ひとつ大きなあくびをして、慌てて口を手で覆う。
いつカインが寝室に入って来るのかわからないのだ。みっともないところは見られたくない。

 レイナ個人の居間へと続く扉とは対照的にあるもう一つの扉、それはカインの寝室と繋がっているらしい。
 眠い目をこすって、レイナは勢いよく立ち上がった。このままだと、うっかり寝入ってしまいそうだ。


(カイン様は大丈夫かしら? ひどくお疲れになっているのかも知れないわよね。やっぱり、カイン様を困らせないように頑張らないと!)


 新妻としての決意を新たにしたものの、何を頑張るのかはよくわからない。
二人でこの大きなベッドに入って契りを結ぶらしいのだが、きっと何か大切な約束を交わすのだろう。


(それが〝痛む〟なんて、どんな約束なのかしら?)


 うろうろと寝室の中を歩きまわってみる。
 もちろんそれで答えが出るわけでもないが――。


「大丈夫か?」

「ひゃっ⁉」


 背後から突然声をかけられて、レイナは飛び上がった。考え事に夢中になっていて、扉が開いたことに気付かなかったようだ。


「すまない。驚かせた」


 カインに謝罪されて、レイナは慌てた。これでは初めから大失敗だ。

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