カタブツ竜王の過保護な求婚

 意味がわからず訊き返したレイナにカミーラが侮蔑の視線を向けてくる。


「信じられない! あなた、番のことさえ知らないの? この国のことさえ学びもせずに来るなんて、ほんとバカにしてるわ!」


 カミーラが叫んだせいで注目が集まった。
 確かにアデル夫人から花嫁教育を受けただけで、この国――ユストリスについても獣人についても特に学びもしていなかったのだ。

 今さらそれに気付いたことさえも遅すぎる。
 レイナは何も言えず立ち尽くした。


「番っていうのはね、本能で惹かれ合う運命の相手よ。すぐに心変わりするような人間の結婚とは違うの。ただ一人を愛するの。もうすぐ私たちは結婚するはずだったのに……。でもまあ、いいわ。あなたはお飾りの妃でしかないんだから。カイン様が本当に愛するのは私よ。お気の毒にね」


 そう言い残して立ち去るカミーラの後姿をレイナはただ見つめることしかできなかった。
 しかし、頭の中には「気の毒に」という言葉がカミーラではなくカインの声で響いていた。


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