カタブツ竜王の過保護な求婚
「殿下にばれなくて良かったわ!」
「……ばれていないとお思いですか?」
「え? ……ばれたの?」
「確かなことはわかりませんが、獣人は鼻が利くので性別までわかるようですからなあ。まあ、見習いたちは人間同様ヒヨッコのようでしたが、指導係の者には『人間は女でも騎士になれるのか』と訊かれましたから」
カインの前から逃げるように走りだし、新入りらしく率先して片付けを終えたあと。
部屋に戻りながら興奮して話すレイナに、ラベロは目を泳がせながら答えた。
レイナがぴたりと足を止める。
「お怒りになっているかしら?」
「いいえ、それはないでしょう。もしお気づきになっていても、何もおっしゃらなかったのですから」
「……殿下は本当に、私のことはどうでもよいと思われていらっしゃるのかもしれないわね」
「レイナ様……」
気落ちした声に、ラベロも言葉を詰まらせた。
ラベロがなんとか励ませないかと思案しているうちに、当のレイナは自力で回復したらしい。
ふんっと鼻息も荒く顔を上げると、ぎゅっとこぶしを握り締めた。
「でもいいの! 殿下はこのお城で好きにしていいっておっしゃったわ。だったらみんなに迷惑をかけない程度に好きにさせてもうらまでよ!」
「レイナ様……」
今度は別の意味で、ラベロは言葉を詰まらせた。
そして、その〝みんな〟にどうか自分も含んでくれますようにと願った。