カタブツ竜王の過保護な求婚
それらを抑えて王族たちを生かし、最低限の賠償で交渉に臨んだというのに――。
「なぜ王女との縁談を条件に賠償金の減額に応じたんだ……」
カインが思わずぼやくと、フィルがあっさりと答える。
「王女との結婚を条件にすれば、間違いなくレイナ様がいらっしゃると思ったからですよ。そしてそれを陛下にお伝えしたところ、ご快諾いただけましたので」
「だからどうしてそんなことをしたんだんだ⁉」
「それはもちろん、カイン様の想い人がレイナ様だったからです」
「なっ、何を言って……」
「まさかばれていないとお思いでしたか? 鳥たちの間では昔から噂になっておりましたのに」
「昔から⁉」
驚いた様子のカインを見て、フィルは呆れのため息を吐いた。
何事も完璧に近く獣人たちの王である血族のカインがこれほど鈍感になるなど恋とは恐ろしいものである。
しかもこれほどの想いとなると、ただの恋ではない。
「……殿下が鳥の姿になって、幼いレイナ様のお姿を陰からよく覗き見ていらした頃からですね」
「待ってくれ。その言い方は誤解を招く」
「事実ですが」
「それはそうだが……」
珍しく動揺して赤くなった顔を隠すカインを見つめ、フィルはずっと疑問に思っていたことを口にした。
「レイナ様の母君が亡くなられたとき、なぜ離れられたのですか? 今後が心配にはならなかったのですか?」