カタブツ竜王の過保護な求婚
「確かにお前の種族は強大な力を持つ分、制約が多い。いや、それだって自分たちで決めているだけで掟でも何でもない。昔、彼女から離れた理由は聞いた。だが今はすでにお前の嫁なんだ。このままだと彼女はこの城でも居場所を失くすぞ? いや、まだ居場所さえできていないか」
「そんなことは……」
「それがわからないほどバカではないだろ?」
もともと人間を嫌っている者たちも多い中、カインが――王太子が今のような態度を続けていればレイナの立場がないことは誰でもわかる。
もしレイナでなければ、カインも花嫁の立場を慮ってきちんと敬意をもって接していただろう。
ようやくそのことに気付いたのか、カインは黙り込んでしまった。
カインにとってレイナは初恋の相手でありながら、ずっと触れてはいけない存在だったのだ。
まだ十代の頃、油断したばかりに怪我をして途方に暮れていたところに人間の子供に見つかったときには最悪の事態を覚悟した。
人間の子供は残酷だと、他の鳥たちからよく聞いていたからだ。
ところがその人間の子供――レイナは怪我が治るまで懸命に世話をしてくれ、回復してからは鳥籠に閉じ込めることもなく空へと返してくれた。
別れを惜しんでぽろぽろと涙を流しながら、それでも「元気でね」と笑顔で――泣き笑いの顔で送り出してくれた姿を忘れることはできなかった。