カタブツ竜王の過保護な求婚

 レイナがあまり幸せでないことは治療中に気付いていたので、それから何度も様子を伺いにいったが、恩を返すこともできないまま。
 父王から人間とは極力かかわっていはいけない、力を使ってはいけないと強く言い含められていたからだった。
 だがこのままでは力を使ってしまうのも時間の問題だと、カインは痛む心を堪えてレイナから離れたのだ。


(それがまさか、花嫁として再会するとは思わないだろ……)


 三日前、何気なく騎士見習いたちの鍛錬に顔を出した時には、本当に驚いた。
 レイナが見習いたちに混じって剣の稽古をしていたのだから。

 鍛錬場に入り、見習いたちの中に人間が混じっていることには気付いた。しかもそれがレイナであることも。
 指導係はカインに向けて困ったように笑い、この場にいるはずのない彼女の近衛騎士は気まずそうな顔で視線を逸らした。

 信じがたいことではあるが、あの新米の見習い騎士は本当にレイナらしい。
 そこでようやく、カインは彼女を避けようとするあまり、レイナを檻の中に閉じ込めていたことに気付いた。
 しかし、今はまだ何を言えばいいのかわからない。


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