カタブツ竜王の過保護な求婚
「フィル、フロメシアのラクス王たちの動きはどうなっている?」
「先代国王ですよ、殿下」
話題を変えたカインの言葉を訂正し、フィルは続ける。
「まあ、相変わらず裏であれやこれやと画策していますね。偉大なるフロメシアがなぜ少数の獣人ごときの国であるユストリスに敗れたのか、未だに理解できていないようです」
「……引き続き、警戒を怠らないでくれ」
そう告げると同時に、最後の書類に署名したカインは立ち上がった。
フィルは積み上がった書類を綺麗にまとめながら、足早に部屋から出て行こうとするカインに忠言した。
「フロメシアの先代国王たちがどのように画策しようとも、レイナ様は関わっていらっしゃいませんよ」
「わかっている」
足を止めることなくカインは答えた。
今まで表舞台に出てくることのなかったユストリスの台頭を快く思わない者たちは少なくない。
同盟を結んだとはいえ、フロメシアもまだまだ油断できないのだ。
自分の態度を思い返してレイナの立場をさらに悪くしていたことに後悔しつつ、カインは着替えのために自室へと急いで戻って行った。