カタブツ竜王の過保護な求婚
「すごい……賑やかですね……」
窓の外から飛び込んで来た色の洪水に、レイナは圧倒されたように呟いた。
その瞳は興奮に輝いている。
カインは目をそらし、街の様子に気を取られているふりをした。
出発前にフィルと話した内容が忘れられず、つい意識してしまうのだ。
レイナが笑えば、栗色の艶やかな髪が波打つように揺れ、琥珀色の瞳がきらきらと輝く。
あえて視界に入れないようにしても、自然と目が追ってしまう。
だからこれ以上惹かれないようにと、できるだけ顔を合わせないようにしていた。
そして時間があればカミーラの願いに応え、隠れて会っていた。
そんな理不尽な態度を続けるカインの仕打ちにも、レイナは何も言わない。
それとも、ただ気にしていないだけなのだろうか? この国に嫁いだことによって、義務は果たしたと?
ふとそんな疑問が胸をよぎる。
「――あなたは……」
「はい!」
思わず口を開いたカインに、レイナは期待に満ちた顔で嬉しそうに答えた。
その表情が、今までの笑みが偽りにすぎないと教えている。
淡く色づく上気した頬に触れ、その柔らかさを確かめてみたい。――との気持ちが急に湧き上がり、慌ててこぶしをぎゅっと固めた。
「……もうすぐ目的地に着く」
「は、はい」
またそっけない言い方になってしまい、カインは内心で舌打ちした。