カタブツ竜王の過保護な求婚


「昨日は素晴らしい機会をいただき、ありがとうございました」


 二人きりの晩餐の席で、レイナは改めて昨日のお礼を言った。
 帰りの車中では上手く伝えることができなかったが、もう一度だけと勇気を出したのだ。
 すると、カインはかすかに微笑んだ。


「こちらこそ、昨日のことは感謝している。皆もたいそう喜んでいた」


 優しい言葉を返されて、レイナの心ははずんだ。顔が熱くなり、胸がどきどきと音を立てて打つ。
 公務で何か失敗をしてしまったのだろうかと、城に戻ってから落ち込んでいた昨日の夕刻、今日の晩餐を一緒にどうかとの誘いを受けた時には、信じられなかった。

 そして、緊張してこの時を待っていたのに、カインの笑みを初めて目にして全てが飛んでしまったようだ。
 浮き立つ心のままに、むっつり黙って食事をするカインを嬉しそうに見ながら、レイナは二人分のおしゃべりを朗らかに続けた。

 そんな彼女に、カインはほっとしていた。
 だがこれはまだ始まりに過ぎない。
 ここから先、フィルの言う『求愛行動』に何をすればよいのだろうと悩むんでいた。

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