カタブツ竜王の過保護な求婚

「やっぱり、今日のことはただの義務感からかしら……。殿下はほとんどお話してくださらなかったし……」


 明るく装うことに疲れたのか、レイナはどんどん沈み込んでいくようだった。


「――殿下は今、非常にお忙しいようですね。それでいつもは執務室で食事をとっていらっしゃるとか……。それに普段から必要なこと以外はお話しにならないそうですから、今度は何か、レイナ様から質問されてみてはどうですか? 殿下のお好きな本やご興味がおありになることなど」


 その場しのぎの慰めでしかないが、それでも嘘ではない。
 今までカインはまるでレイナの存在を忘れてしまったかのように振る舞っていたが、昨日の公務では気遣いを見せていたし、今日は晩餐も共にしたのだ。
 たとえそれが、不仲説を払拭するためだったとしても。


「そう……そうよね! じゃあ、次は質問攻めにするわ!」

「攻めてどうするんですか。それでは守りに入られてしまいます」

「なるほど! アンヌは頭がいいわね!」

「普通です」


 またいつもの明るさを取り戻したレイナにアンヌは安堵した。
 王太子が妃殿下の寝室をまったく訪れないことも噂になっている。その他にもある不愉快な噂がどうかこれ以上、レイナの耳に入りませんようにと願い、アンヌは手伝いのメイドたちを呼んだ。

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