カタブツ竜王の過保護な求婚
翌日――。
「カイン様の夢は何ですか?」
との質問に、アンヌはずっこけそうになった。
アンヌが慰めに言った「今度」が予想外に早くやってきたのは良いのだが、一晩考えたらしいレイナの質問までもが予想外だった。
だが、レイナは本気である。妻として、夫の夢を支えたいのだ。
本音を言えばカインが何の獣人なのかを知りたかったが、まだそこまで踏み込んではいけない気がしていた。
そのため、別の角度から攻め込んで――切り込んでみることにした。
初めての夜にカインからは、この婚姻を本物にするつもりはないと言われたが、どうしても希望を抱かずにはいられない。
そんなレイナの気持ちが伝わったのかどうなのか、カインはわずかに逡巡した後に口を開いた。
「私は、私の理想とする世界に少しでも近づきたいと望んでいる」
「……理想の世界?」
興味深そうに訊き返したレイナに、カインはうなずく。
「この国は遥か昔、人間たちから迫害された獣人たちが身を寄せ合い、助け合い生まれた国だ。なぜ人間たちは自分と違うというだけで差別し、排除しようとするのだろう。獣人たちはただの人間たちよりも力が強く跳躍力もあり、速く走ることもできる。それなのに不毛の大地とされていたこの地に追われたのは、皆の心が優しいからだとは思わないか? もちろん好戦的な獣人もいるが、ほとんどの者は争いを嫌う。だからこそ、強い力を使って森を開墾し、貴重な作物の種を植え、試行錯誤しながら大切に育てた。また固い山を掘り開けば金が産出され、交易が盛んになり、大きく発展した」
そこまで説明したカインは、一度口をつぐんだ。