カタブツ竜王の過保護な求婚

 ここで怒りに任せて退席することも可能ではあったが、フィルがこの宮廷に滞在している間に得たある情報がそれをさせなかった。


「……私の一存では決められませぬゆえ、ただちに持ち帰り王へとお伝えいたしたく、これにて失礼してもよろしいでしょうか?」


 一瞬の沈黙の後に、フィルは立ち上がり一歩下がると深く頭を下げて敬意を表しつつ答えた。
 これに当然のようにラクスは頷く。


「もちろんだ」

「それでは、お目汚し失礼いたします」


 そう一言告げたフィルは東屋から駆けるように飛び出し、瞬く間にその姿を大鷲へと変えて空へと飛び立った。


「――ふんっ、汚らわしい獣人が」


 その後姿を見送ったラクスは侮蔑の言葉を吐き出し、東屋から去っていった。

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