カタブツ竜王の過保護な求婚
つい長々と話してしまったが、女性には退屈だろうと思ったのだ。しかし、レイナは真剣な様子で続きを待っている。
カインは少し考え、再び語り始めた。
「だが豊かさは欲をも惹き付ける。獣人たちは侵略者たちから守るために高い壁を作り、争いを避けていた。にもかかわらず、人間たちは先般の戦のように争いを仕掛けてくる。我々は対抗するべく国を興した」
「人間も……全員が好戦的というわけではありません。いえ、平和を望む人たちのほうが多いと思います」
「ああ。それは否定しない。それでも人間たちの心には、獣人への差別が根付いているのではないか?」
「それは……」
「あなたを責めているわけではない。問題は根深い。正直に言えば、獣人たちの間にだって差別はある。力の強い獣人は、力の弱い獣人を。空を飛べる獣人は、空を飛べない獣人を……。皆がそれぞれの特徴を認め合い、助け合えればいいのだが、こればかりは難しいだろうな。このユストリス国内でも災害は起こるし、飢えることもある。あの戦も元をただせば南にある国の水害による農作物への打撃による食糧不足が発端だ。そうして世界を見渡せばいたるところで貧富の差が生まれ、そしてまた差別が生まれる」
レイナはいつの間にか、手を固く握り締めていた。
これは今ある世界の厳しい現実の話なのだ。
確かにレイナもまた、フロメシアの宮殿で愛妾の子として差別を――見下されていた。
それでもぬくぬくと過ごしていた自分には知らなかったことばかり。知ろうともしていなかった。ただ自分の境遇を嘆いていただけ。
嫁ぐことが決まってからも、花嫁教育を不満に思うばかりで、ユストリスについて――世界の現状についてろくに勉強することもなかった。