カタブツ竜王の過保護な求婚
「この大陸はとても広い。それなのに、それぞれの国が孤立している。だから父である王も私も、この大陸が、世界が繋がり合うことを望んでいるんだ。しかし……なかなかうまくいかないものだな。争い、騙し合い、土地を奪う。本当は、私にはこうして偉そうに理想を語る資格もない」
レイナは握り締めていた手をぱっと開くと身を乗り出し、テーブルの上で同じように固く握り締められたカインの拳を両手で包み込んだ。
カインの言葉で傷ついている場合でも、今までの自分を後悔している場合でもない。
つらそうに表情を曇らせるカインに、この気持ちを伝えるべきだ。たとえ望まれた花嫁ではなくても、レイナはユストリスの王太子妃なのだから。
「わたしはカイン様の妻です! ですから、カイン様が一つの世界を目指すなら、わたしも目指します!」
「……ありがとう」
ちょっとばかり淑女らしくない、それでも心のこもった、そして力のこもったレイナの告白を、カインは驚いたようだがきちんと受け止めた。
いつの間にか、側に控えていたアンヌたちは姿を消している。
「でもわたしには力も知識もありません! ですが、頑張ればどちらも得られるはずですから!」
続くレイナの自信に満ちた頼りない言葉を聞いて、カインはかすかに微笑んだ。
「さあ、食べましょう!」
「……ああ」
アンヌが見ていたらがっくりしてしまっただろうやり取りだったが、その後は意外なことに、和やかな会話の中で食事は進んだのだった。