カタブツ竜王の過保護な求婚
「――まさか食事を共にされたくらいで、カイン様のお心が傾いていらっしゃるなんて思ってはいらっしゃらないでしょう?」
飛んでいく蝶をぼんやり見ていると、にこやかな笑みを浮かべたカミーラが毒を吐きながら近づいてきた。
アンヌや護衛もさすがに公爵令嬢のカミーラを止めることはできなかったらしい。
「……ごきげんよう、カミーラ様」
「あら、余裕でいらっしゃるわね。それともカイン様のお心はどうでもいい? ご公務で仕方なくとはいえ、カイン様とご一緒に公の場に出られたのですものね。さぞ誇らしかったでしょう?」
「では、カミーラ様はさぞ悔しかったでしょうね? 本来ならご自分がいらっしゃった立場に私がいるのは」
今までずっと我慢していたが、つい言い返してしまった。
レイナがしまったと思ったときにはもう遅かった。
カミーラはきつくレイナを睨みつけたが、ぱっと可愛らしい笑顔に変わる。
「カイン様!」
レイナはカミーラが目の前でカインの腕に絡みつくのを見ていた。
だがカインは振り払うことも窘めることもせずにカミーラに微笑みかける。
それはレイナがめったに見ることのないカインの笑みだった。