カタブツ竜王の過保護な求婚

「カミーラ、君は領地に帰ったんじゃなかったのか?」

「そうですけど……カイン様と離れているのは寂しくて、お父様について戻ってきてしまいました」

「そうか……」


 二人はまるで恋人同士のように楽しげに会話している。


(いいえ。まるで、ではなく本当の恋人同士なのよ。私が番になるはずだった二人の仲を裂いてしまっただけで……)


 カインは呆然として見ているレイナの存在を忘れてしまったかのようで、これ以上は見ていられなかった。
 もごもごと辞去の挨拶をして逃げるようにその場から立ち去ったので、カインが何か答えたのかはわからない。

 ひょっとして何も言葉をかけてさえくれなかったもしれないのだ。
 それを知るのが怖くて、レイナは気遣うアンヌたちに何事もなかったかのように接したのだった。 


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