カタブツ竜王の過保護な求婚
「この結婚はあまりに急だった。あなたも突然嫁ぐことが決まり、さぞ驚いたことだろう。だが無理をするつもりはないと伝えたかったんだ。それがあのような言い方になってしまって傷つけたのではと後悔していた」
「い、いえ……あの……」
傷つかなかったというのは嘘だ。
それでもこれ以上カインを悲しませたくなくてレイナは否定しかけたものの、それもまたこの結婚を何とも思っていないというようでためらわれた。
カインはそんなレイナの手を取り、両手で包むように握る。
「確かにこの結婚は政略によるものだ。しかし始まりはどうであれ、私たちがより良い関係を築いていくためにこだわる必要のないものだとようやく気付いた。だからどうか、これからもう一度始めてくれないだろうか?」
「も、もちろんです!」
こんな夢みたいなことがあっていいのだろうか。
レイナは嬉しさのあまり頭がぼうっとしながらも、大きく頷いて答えた。
するとカインが嬉しそうに微笑む。
途端にいつもは美しさのあまり近寄りがたい印象のカインの表情が温かなものに変わる。
ますますぼうっとしてしまいそうな頭とは逆に、レイナの心臓は驚くほど速く打ち始めた。
「よかった。王女の義務としてあなたをこの結婚に縛り付けるのは、あまりに気の毒だと思っていたんだ」
「……え?」
たった一言で、浮かれていた頭が冷める。
レイナが〝気の毒〟だからと、カインは歩み寄ろうとしてくれているのだ。
ひょっとして先ほどの花嫁の顔色の悪さを見たせいかもしれない。
それでも――同情でもかまわない。夫であるカインと良好な関係を築いていけるなら。
レイナは痛む心にふたをして、喜びだけに集中して微笑んだのだった。