カタブツ竜王の過保護な求婚


「獣人の王っていうからどんな獣かと思ったら、とても素敵な方なのね」

「……お姉様、お久しぶりです」

「誰がそう呼ぶことを許したの? 獣たちの国の王太子妃になったからって、お前の立場が変わったわけじゃないのよ。偉そうにしないで」

「……申し訳ございません」


 フロメシア王宮に到着したときにはかなり好奇の目で見られた。
 だが同情的だった女性たちの視線は、カインの姿を直接目にして羨望に変わったことにも気付いていた。

 結婚式の間でもそれは続いていたが、昨夜の祝宴の席ではかなりあからさまになっていたのだ。
 そして勇気ある者はカインに恐る恐る話しかけ、にこやかな返答を得ては男女ともに頬を染めていた。

 相変わらずレイナはいないものとして扱われていたが、カインはできる限り会話に引き込み、傍から離れることもなかった。
 すると皆も次第にレイナに敬意をもって接してくれるようになっていたのだ。
 そのことが嬉しく、昨夜は夢見心地でベッドに入った。――カインとは別々だったが。

 目が覚めてからも浮かれたままでいたために自分の立場を忘れてしまっていた。
 カインがフロメシアや他国の首脳陣と会談している間はおとなしく部屋にこもっていればよかったのに、愚かにも庭になど出てきてしまったからルルベラと出会ってしまったのだ。

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