カタブツ竜王の過保護な求婚
顔を伏せる前に見えたルルベラの意地の悪い笑み。
いつも悪いことが起こる前触れに、レイナはぞっとした。
「ねえ、あの方は何の獣人なの?」
「……」
ルルベラに問われても、レイナには答えることができなかった。
たとえ知っていても口にすることはなかっただろう。
そう思うと、レイナは知らなくてよかったと安堵した。
「無視するんじゃないわよ!」
「――っ!」
ルルベラが投げつけた扇子が額に当たり、レイナは痛みに呻いた。
付き添っていたアンヌは守ることもできず、ぐっと唇をかみしめる。
顔を上げなくてもレイナにはルルベラが満足げに笑っているのがわかった。
「まさかお前、知らされていないの?」
「……はい」
ルルベラはレイナを蔑むときに勘がよく働く。
バカにされることもわかっていたが、レイナは正直に答えた。
見栄を張るよりも、これ以上の追及を避けたかったのだ。
案の定、ルルベラはバカにしたように笑う。
「やっぱりね! お前ごときが受け入れられるわけがないのよ! たとえ獣人の国でもね!」
「……」
反論せずにレイナはうつむいたまま沈黙を通した。
ここで反応してしまっては自分だけでなく、みんなに迷惑をかけることになるからだ。