カタブツ竜王の過保護な求婚
本来負けん気の強いレイナには苦痛であったが、自分一人が我慢するだけのほうが楽なことも経験から学んでいた。
あらかたレイナを罵れば、ルルベラは満足して去っていく。
それまで黙ってやり過ごせばいいのだ。
「ねえ! ひょっとしたらあの方は人間なんじゃないかしら?」
「……はい?」
予想外の言葉に、レイナはつい顔を上げてしまった。
ルルベラは自分の考えに夢中になっているのか、レイナの驚きには幸い気付かない。
「醜い尻尾や耳なんてどこにもなかったわ。あのように美しいなんて……。それにやっぱり王となるには知性が必要よね。獣に知性を求めるのは無理だもの」
突拍子もない考えにレイナは唖然とした。
獣人には知性がないと差別する人間がいることは知っていたが、こんなにはっきり耳にするとは思ってもいなかったのだ。
しかもルルベラはユストリスの交渉団と直接話をしないまでも、晩餐などに同席している。
また鷲の獣人である秘書官のフィルも普段は人間と何も変わりがない。
(まさかフィルのことも人間だと思っていらっしゃるとか……?)
他にも交渉団の中には人間と見分けのつかない者たちはいた。
この度の訪問でも、カインに付き添ってきた者たちもほとんど同じ顔ぶれのはずだ。