カタブツ竜王の過保護な求婚

「――ねえ、聞いているの⁉」

「はいっ!」

「じゃあ、いいわね。もともと私の縁談だったんだから、私に返してもらうわ」

「い、いえ! それは――」

「はあっ? お前、私に逆らうの?」


 心にしみ込んだ恐怖がレイナの体を震わせる。
 十年以上も虐げられていたのだから当然ではあるが、それでもレイナは昨日のカインの言葉を支えに勇気を出した。


「わ、私とカ……殿下はすでに結婚しておりますので……」

「離縁すればいいじゃない。そうよ、お前から今日にでも申し出なさい。いいわね?」

「い、いやです」

「何ですって?」

「カ、カイン様と別れるつもりはありません!」

「お前――」

「レイナ、ここにいたのか」

「カイン様⁉」


 突然聞こえた声に驚いて振り向けば、カインは優しく微笑んで立っていた。
 予想外にカインと会えたことで嬉しくもあったが、今の会話をどこまで聞かれたのだろうと恥ずかしくもなる。
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