カタブツ竜王の過保護な求婚
自意識過剰ではなく、クスクスとレイナを笑う声が聞こえる。
だがそれもいつものことで、レイナはすっかり慣れていた。
一人でお茶を飲み、ある程度時間が経ったところで退席しようとカップを置く。
これが最後だからこそ、嫌ではあるが礼儀正しく主催者に挨拶をして引き上げるつもりだった。
ユストリスの王太子妃は無礼者だと――やはり野蛮な国なのだと嘘でも言われたくない。
何度も耳にした野蛮という言葉に過敏になっているのかもしれない。
先代王妃を捜して会場を歩いていると、よく知る顔を見つけた。
一瞬、気付かなかったふりをしようかとも思ったが、それでもお世話になったのだからと、レイナは近づいた。
「お久しぶりです、アデル夫人。その節は大変お世話になりました」
「嫌だわ、話しかけないでくださいませんか? いえ、それよりも離れてくださいませ。ようやく獣臭さが消えたと思ったのに、また臭いが移りますから」
レイナが声をかけたことで、周囲は一斉に注目していた。
そしてアデル夫人の返答を聞いて、隠そうともせずに皆が笑う。
レイナは自分のことよりもユストリスのことをバカにされたことに腹を立てた。