カタブツ竜王の過保護な求婚
レグルの背後にはカインもいる。
この愁嘆場を見られたことが恥ずかしくて、レイナは今まで以上に小さくなった。
しかしカインはすっと歩み出ると、レイナの傍までやってきて抱き寄せる。
カインの腕の中はレイナにとって泣きそうなほど嬉しく安心できる温かさだった。
「王太子殿下、あなたはその娘に騙されているのです。本来ならこの子が――ルルベラが殿下の花嫁となるはずでしたのに、その娘がレグルを丸め込んで奪い取ったのですわ」
「そうよ! ねえ、お兄様? 今回の縁談は私に持ってきてくださったのよね? それをあの子が聞きつけて、お兄様に我儘を言ったのよね? 自分が花嫁になりたいって」
「いや――」
元王妃とルルベラの言葉にレグルに付き従っていた者たちまでもがざわめいた。
それを否定しようと口を開きかけたレグルを、カインが手を上げて制する。
「私は人間よりもかなり耳が良い。だからこそ私の妻が謂われなき責めを受けていることに気付いて駆け付けたのだ。また鼻もよく利くので、嘘を吐いている者たちのことも臭いでわかる」
「なっ、そんなこと……」
耳に心地よく響く涼やかな声でカインはきっぱりと告げた。
その内容に皆が驚愕する。
ルルベラは青ざめながらも何か言いかたが、冷たいカインの眼差しに射貫かれて口を閉ざした。