カタブツ竜王の過保護な求婚
「私はレイナだからこそ、この縁談を受けたのだ。でなければ、賠償金の減額もなかっただろう。まあ、交渉団の者たちも、あなたではなくレイナが嫁いでくるだろうことを最初から見越していて条件にしたようだがな。あなたでは民が納得しないことは皆が承知している」
「そ、そんな獣人ごときに――」
「ルルベラ、黙れ」
「レグル! あなたは妹が大切ではないの? 侮辱されているのよ?」
ルルベラは皆の前で侮辱されてどうにか反論しようとしたが、レグルの厳しい声に制された。
その態度に元王妃が抗議する。
しかしレグルは顔をこわばらせて元王妃を見下ろした。
「母上、誰がこのような催しを許したのです? 民が餓えをどうにか凌いでいるというのに、なぜ愚かにも茶会など開くのですか? そもそもあなたにはもう何の権限もないのです。王宮で好きに振る舞うことは許されません」
「レグル、あなたは――」
「私のことは陛下とお呼びください、フロメシア夫人」
「なっ……」
「それにルルベラ、お前にはいい加減呆れたよ。レイナはもうユストリス王太子妃殿下となったのだ。それに対し、お前の態度はあまりに無礼だ。母上もルルベラも自分の立場をよくよく理解してほしい。よって、ルルベラを王籍から外す」
「お兄様⁉」
「レグル! 何を血迷っているの⁉」
「陛下、だ。私はもうお前の兄ではない。だが父上と母上の娘であることに変わりはないのだから、両親の元で暮らすがいい。そのうち縁談もあろう」
突然の宣言に、ルルベラや元王妃だけでなく、その場に居合わせた全ての者たちが驚き息をのんだ。
レイナもまた驚いてレグルを見たが、その表情から兄が本気であることを悟った。