カタブツ竜王の過保護な求婚

 その中で何人かがあからさまにルルベラや元王妃からそっと離れていく。
 つい先ほどまでルルベラと一緒になってレイナを嘲笑していたというのに変わり身が早い。


「な、何よ! お前なんか卑しい――っひ⁉」

「ルルベラ? ルルベラ!」


 憎しみを込めてレイナを睨みつけ指をさしながら罵りの言葉を吐き出しかけたルルベラは、ぴたりと動きを止めたばかりか徐々に顔を真っ赤に染めていく。
 その様子がおかしいことに元王妃が――母親が声をかけるが答えることができないようだ。


「私には制約が多くある。それは力が過ぎるため、弱き者を傷つけないためのものだ。しかし、私の大切なものを守るためなら制約は簡単になきものとなる」

「カイン様?」

「カイン殿! どうかこれ以上はお許しください。ルルベラの非礼は私もお詫びいたします! ですから――」


 レイナには何が起こっているのかわからなかった。
 ただルルベラの赤かった顔が今は白くなっていて、レグルが頭を下げたことに驚く。


「あなたが頭を下げる必要はありません。私も少々感情的になってしまいました。どうか頭を上げてください」


 ルルベラがどさりと座り込み、激しくせき込み始める。
 初めて聞くルルベラの嗚咽交じりの醜い声が、静まり返った室内に大きく響いていた。


「予定通り、私たちは明日発たせてもらう。それまでは誰も私たちに近づかないでいただきたい」

「ええ、わかりました。……レイナ、すまなかったな」

「い、いえ……」


 結局わけがわからないまま、レイナはカインに連れられてまた部屋に戻ることになったのだった。

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