シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
✴︎



「学祭に行く」


と一子が言った。
櫂の共学の高校は、今日から学祭。
女子校の方はまた別の日程だ。

一子は6年生になるし、中高の学祭を見せるという建前で櫂の様子を見に行くらしい。もちろん亜紀も誘われた。

下の子達は、幼稚園の延長保育と、四狼くんは弥勒さんが喜んで会社に連れて行ったそうだ。


「3人で学祭に行くよ」


って一子が櫂に言ったら、


「あ、そう」


と珍しく返事をした。
でも⋯⋯ 。

(私まで行って、迷惑じゃないかな。
怖い⋯⋯ 。
みんなと⋯⋯ 女の子といる櫂くんを見るのは。
もし、みんなの前であからさまに不機嫌になって、迷惑そうな顔をされたら⋯⋯ )

逆も考えてみた。

(私の学祭に櫂くんが来てくれたら、恥ずかしいし、嬉しいし、テンパって、私はどうするだろう。どうかしてしまうかも。だから、櫂くんだって人のいるところで会いたくないんじゃないかな⋯⋯ )

度胸のある一子は平気だし、強い菜摘さんは、ずっと忍耐で櫂が心を開いてくれるのを待ってて彼を見放さないし、亜紀は⋯⋯ 。

やはり彼の、櫂のほんとの姿を信じたい。
話したがってる櫂を待ちたい。
どんな時でもそばにいたい。
あの時の亜紀が可愛いと言ってくれた櫂を見つけたい。


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