シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
櫂は、いま、ひたすら真っ直ぐにトコトコ歩く一子を、飽きずにずっと追いかけて、1人で転がったり、騒いだり、走り回ったりして、それでも一子が動じずにトコトコ歩くから、面白がっている。
明るくて無邪気だけどな。
頭の回転も早いし自信もあって、その上イケメンなのに。
怪我さすとか不登校とか、全然そんな風に見えない。
みどりさんがため息をついて、櫂と一子を見る。
「一子ちゃんは美人ね」
「はい? 」
チラッと菜摘を見て、弥勒を見た。
「弥勒にも似てて」
と付け加える。
ちょっと菜摘は笑った。
菜摘は美人とはタイプが違うから。
一子を見たら、確かに驚かれて、『まぁ、お父さんに似て⋯⋯』 と言いにくそうによく言われる。
一子は、ものすごく見た目が可愛いい。
絶対美人になる、でも、ものすごくどっしりした、全く動じない性格の子だ。
しかも、細かいことを気にしないし、あきらめも早い、こだわらない⋯⋯ 。
弥勒とは教育だけは熱心にしようと話し合っている、せめて、深く物事が考えられるように、細やかな気遣いが出来るように、元々の性格はあるとして、あとは教育のみ!
「一子ちゃんは、菜摘ちゃんが家にいるから、あんな美人さんに育ってるのかな」
「そうだね」
なんか 不動⋯⋯ お兄さんも弥勒さんも、みどりさんも神妙な顔をしてるけど、美人と関係ある、のかな⋯⋯ 。
「私が家にいにいないから、櫂はあんな
⋯⋯ 」
みどりさんが悲しそうに言うから、しかもみんな真面目な顔をしてるから、思わず菜摘は言った。
「違いますよ、きっと、そんな事じゃないと思います!
あの、お金持ちだからです、きっと」
えっ、と3人が菜摘を見る。弥勒が、
「あぁ、そう言われてみれば、オレも身に覚えがあるかも。金持ちってね」
お兄さんも、
「何言ってるのか分からない、とはよく言われたな」
みんなが櫂くんを心配して、思ってるのはわかるけど、もしかして原因が見えてないのかもしれない。
「具体的何があったんですか?
もし良かったら、話してみてください」