モブで地味子な私を、超イケメン男子が、かまってかまって溺愛中!

第10話「安心した?」

 男女20人の集団デートは大好評だった。

 この『デートイベント』が、私の学校生活を大幅(おおはば)に変えた。
 白鳥さん以下クラス女子達とすっごく仲良くなったんだ。

 成瀬君の『友だち宣言』以降、ボッチ状態は解消され、クラスの女子達と互いにあいさつするようになっていたけど……
 さらに「ぐぐっ!」と距離が縮まった。
 
 私はもうボッチではなくなった。

 一緒に行けなかったクラスの女子達も残念がり、ひんぱんに声をかけられるようになったのだ。

 クラスでの私の呼ばれ方も変わった。
 「みしま~」から、成瀬君が呼ぶように「ゆい~」と変わったのだ。

「ゆい~、おはよ!」
「ゆい~、ごはんいこ!」
「学校終わったら、遊びに行こう!」

 特に仲良くなったのが白鳥さんだった。
 話すうちに、だんだん彼女の素が見えて来た。
 私も少しずつ本音で話すようになった。

 という事で、成瀬君には大感謝。
 
 ささやかだけど……
 今日のランチは『お礼』も兼ねて私のおごり。
 売店でクリームパン、ハムカツサンド、無糖の缶コーヒーを2本買った。

 以前の私なら考えられないけど……
 隣のクラスへ行って、勇気をふりしぼり、私の方から成瀬君を誘った。
 場所はいつもの通り屋上で。

 私は甘いパンをかじり、苦いコーヒーをすする。

「成瀬君、この前、みんなで遊んだ楽葉原、すごく楽しかったよ、ありがとう」

「おう、良かったじゃん」

 あれ?
 成瀬君がそっけない。
 機嫌でも悪いのかな?
 大好きなハムカツサンドを持ったまま食べないし……

「ゆい」

「ん?」

「お前、この前、俺の友だちと電話番号とか、メールアドレスの交換しなかったよな?」

「うん、しなかった。成瀬君の連れて来た人達だから、大丈夫とは思ったけど……初対面だからね」

 そう、この前、成瀬君以外の男子数名から『電話番号とメールアドレス』を聞かれた。
 大半の女子が気軽に教えていたけど、私はそうしなかった。

「そうか……」

「うん、連絡先は、本当に気が合った人にしか教えないんだ」

 私がそう言うと、成瀬君は黙り込んでしまった。

「……………」

「どうしたの?」

「い、いや、実はさ……」

「???」

「ゆいと遊びに行きたいからって」

「はあ? 私と?」

「連絡先を聞いてほしいと、数人から何度もお願いされたんだ」

 ええ?
 そうなんだ……
 でも、私はあまり知らない人にむやみに教えたくない。

「う~ん。それ断ってほしい。悪いけど成瀬君から、うまく伝えてくれる?」

「お、おお。そ、そうか」

「うん、遊びに行くのも、成瀬君と一緒だったら構わないけど……ちょっと」

「了解! じゃあ、断っとく! これで安心してメシ食えるな」

「安心?」

「な、な、何でもないよ、そうだ、ゆい、ごちそうさん!」

 成瀬君はにっこり笑うと、パンをがぶっと噛み、おいしそうにコーヒーをすすったのである。
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