モブで地味子な私を、超イケメン男子が、かまってかまって溺愛中!

第4話「お前は俺の特別」

 成瀬君が告げた言葉はまったく意外(いがい)だった。
 何と、頭を下げ、素直(すなお)にあやまってくれたのだ。

「ごめん、ゆい。俺の気くばりがたりなかった」

 すごく驚いた。

 だって、あやまってくれる展開(てんかい)なんて完全(かんぜん)想定外(そうていがい)だった。
 
 この俺に向かって生意気だ!とか、
 頭に来た、じゃあな!とか、
 迷惑(めいわく)だと、ふざけるな!
 
 とかいろいろ言い、俺様チックに、さっさとこの場を去ってしまうかもしれないと思ったから。

 成瀬君を見直した。
 好感度(こうかんど)ア~ップ! かも。
 
 ならば、私だって、いつまでも根に持つような事をしない。

「分かってくれればいいよ。でも相変わらず私の事は、三島(みしま)じゃなく、ゆいと呼ぶんだね」

「ああ、俺は、ゆいと呼びたい。代わりにお前も俺の事、ゆうまって、呼んでかまわないから」

 はあ?
 ゆうまと呼べ?

 またいきなり、何言ってるの、この人。

「いやいや、ゆうまとか呼び捨てなんて、ヤバイよ。成瀬君のファンに、ぶっとばされたくないから、やめとく」

「何だよ、それ」

事実(じじつ)じゃん」

「でもさ、ゆい」

(なに)?」

「はっきり言うよ。お前は俺の特別(とくべつ)だって。一緒にいると気持ちがやすらぐんだ」

 はあ?
 俺の特別?
 一緒にいると気持ちがやすらぐ?

 この人、またまた何か、言ってるぞ。
 もしかして、くどいてる?
 それとも告白?
 ファンの女子ならば、まいあがって、心がハッピーになるだろう。 

 でも、私の心には(ひびか)かない。
 確かにファーストインプレッションはグッドだった。
 だけど、いきなり『特別』はないと思う。

 私はモブだけど、チョロインではない。
 返す言葉も決まってる。
 成瀬君と私はアニメ好きな『単なる同士』なのだから、うん。

「特別? まあ、あのアニメのファンは少ないからね。確かに私と成瀬君は特別だよ」

「ゆい、そういう意味じゃないって」

「ひとつ言っとくよ。もしもさ、ファンの女子達がやきもちやいて、私に迫って来たら、すぐ成瀬君を呼ぶからね」

「おう! どんどん呼べ。俺のスマホ番号教えといてやる。メルアドもな。お前の番号とメルアドも教えろよ」

 成瀬君はスマホの番号とメールアドレスを告げ、私は自分のスマホに登録しておいた。
 そして、ちょっと迷ったけど……
 私の番号とメルアドも教えておく。
 事前(じぜん)連絡(れんらく)をとりあえば、今日(きょう)みたいなことはないはず。

「よし! お前には絶対、迷惑かけないようにする。もしも、こくられても全員断るからな」

了解(りょうかい)。お願いするよ」

 苦笑(くしょう)した私は腕時計(うでどけい)を見た。
 デジタルの文字は、12時35分を浮かび上がらせていた。

「成瀬君、漫才(まんざい)やってるうちに昼休みが終わっちゃうよ。さっさとランチしちゃおうよ」

「お、おお、了解!」

 こうして……
 無事にランチが終わり、私と成瀬君はまたも『心の距離(きょり)』を(ちぢ)めた?のである。
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