モブで地味子な私を、超イケメン男子が、かまってかまって溺愛中!

第8話「気になったからに決まってるだろっ!!」

 事件(じけん)があった翌日(よくじつ)のお昼休み……
 私と成瀬君は、また屋上でいっしょにランチしていた。

 クリームとチョコが食べたくなった私は2色パン、成瀬君は大好物だというハムカツサンド。
 飲み物は、ふたりとも甘くない無糖(むとう)(かん)コーヒー。
 お砂糖(さとう)ナッシングはにが~いけど、それが好きだと成瀬君は言う。
 私も同じ……甘いのは大好きだけど、コーヒーだけはブラック。
 
 ちょっと背伸びしているとか、言われそうだけど……これも理由がある。
 成瀬君と仲良くなったきっかけのアニメで、イケメンの主人公がブラックコーヒー飲んで気取るシーンがあって、私は大好き。
 多分、彼も同じだと思う。

 ふたりで甘くない缶コーヒーを飲んでいると、成瀬君との共通点(きょうつうてん)がまた見つかったと思う。

 私の気持ちが彼に近づいていく。
 少しうれしくなって来る。

 まずはお礼を言わなくてはならない。

「成瀬君、ありがと。きのうは助かったよ」

 対して、成瀬君は「にこっ」と笑い、首をふった。

「何言ってる、ごめんな。俺のせいで、ゆいに迷惑(めいわく)かけちまった」

「そんな事ない。あれから白鳥(しらとり)さんともいろいろ話すようになったよ」

「へぇ」

「いろいろ話してみたら、彼女わかりやすくて、あんがい、いい子だった。なかよくなったよ」

「そうか、あんがいいい子か」

「うん! でもさ、成瀬君の趣味(しゅみ)……ホントに(おし)えて良かったの?」

 そう、成瀬君は私に告げた。
 アニメとラノベが大好きだって、他の人にも(つた)えて(かま)わないと。

「…………………」

 成瀬君はしばらくだまってた。
 考えこんでいるようだった。

「ずっと、ないしょにしてたんでしょ? まわりにさ」

「ああ、ないしょにしてた」

「成瀬君がアニメとラノベが好きだなんて幻滅(げんめつ)したとか言って、ファンクラブやめた子がいるって……白鳥さんから聞いた」

「幻滅? ……そっか。勝手に俺のイメージ作ってたんだな。俺はキャラ作りするアイドルじゃないっつーの」

「だよね。私も意外だったけど」

「でも、ゆい。お前は俺にねほりはほり聞かなかった。俺がアニメやラノベ好きだって言うと、なぜ?とか、どうして?とか、いっつもたくさん聞かれるんだ」

「へぇ、そうなの? 好きならそれでいいじゃん。私はそう思う」

「………………」

「もし、成瀬君が自分で理由(わけ)(かた)ったら、私は聞いてあげるけど。こっちからいろいろたずねる事はないと思うよ」

 私がそう言うと、成瀬君はにこっと笑う。

「……そういうとこ、好きなんだ、ゆいが」

 え?
 好きって、まさかね。

 でも……
 私だって成瀬君を知るにつれて、「好意以上」の気持ちになって来ている。

 ここで私はず~っと疑問に思っていた事を聞いてみる。

「成瀬君」

「ん?」

「成瀬君は学校では有名人だから、私は名前と顔を知ってたけど」

「そ、そうか?」

「でも成瀬君は、どうして私の名前と顔を知ってたの?」

 私が尋ねたら……成瀬君、少し慌てている?
 あれれ?

「え、ええっと……あ、あのアニメのイベントって、2回目だろ?」

「うん! そうだね」

 そう、今回行われたのは2回目のイベント。
 当然、第1回目、最初のイベントに私は参加した。

「お、俺ファーストイベントで、ゆいを見かけて……」

「私を? 成瀬君が?」

「お、おう! そ、それで! ど、ど、どこかで見た子だなって、き、気になって」

「ええっ!? わ、わ、私を? 気になって?」

 今度は私が慌てた。
 成瀬君が気になって?
 モブで地味子な私を!? 

「お、おう! ゆ、ゆいと同じクラスの野球部の奴に、い、いろいろと……き、聞いたんだよ」

「そ、そ、そうだったんだ……わ、分かった」

「あ、ああ、じ、実は! そ、その時! こ、こ、声かけようかと思ったけど……ナ、ナンパみたいでイヤだから、やめたんだ!」

「う、うん……」

「そ、それで、仕方なくメインイベント終了後の握手会に並んだら……ぐ、偶然ゆいが、後ろに並んでた。そ、そ、そういう事だっ!」

「へ、へぇ! で、で、でもっ、な、な、何で! わ、わ、私の事を! や、野球部の人にいろいろ聞いたのっ?」

「す、す、すごくっ! き、き、気になったからに決まってるだろっ!!」

 いつも堂々としている成瀬君は、珍しく大いに噛みまくり……
 最後には、ばつが悪そうにそっぽを向いたのである。
< 8 / 53 >

この作品をシェア

pagetop