アンチテーゼを振りかざせ
「…頑張ったね。」
「ありがとうございます。」
真っ直ぐに伝えられる労いは、照れ臭くもなるけどやっぱり嬉しい。
もう一つ、お饅頭を渡してくるほむさんに釣られるように私も口角を上げてお礼を伝えると、「さ、郵便仕分け行ってこよ〜」と彼はゆらり立ち上がって着荷スペースの方へと去って行った。
私も仕事だ、そう気合いを入れてパソコンへと向き直るとそのタイミングでメールが来ていた。
【いつもお世話になっております。
○○の瀬尾です。
リーフレットのデータ、確認させていただきました。前回に引き続き、こちらの想いまで汲んで作成いただき、心から感謝しております。
またうちのチームリーダーが泣いているのが容易に想像出来ました。】
先に完成データを共有していた瀬尾さんからのメールにふ、と笑みが漏れる。
…確かにこのリーフレットを読んだら枡川さんはどんな顔をして、なんて言ってくれるだろう。
そう思った私は、直ぐに瀬尾さんへ返信した。
【瀬尾さん、まだ枡川さんへは共有しないでいただけませんか。
泣き顔を見に行きたいので、私が改めて仕事終わりにでも直接お渡ししに行きます。】
【承知しました。
…それ、絶対その後居酒屋行くパターンですよね。】
私達は業務メールで何を話しているのかと最後は可笑しくなってきてしまった。
だけど、"この間"は彼女が誘ってくれたから。
"また飲みに行って欲しいです。"
小さい字で伝えてくれたあのヘタレな彼女のことを、今度はきっと、私が誘う番なのだろう。