アンチテーゼを振りかざせ
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「…え、これ全部ですか?」
「うん。保城ちゃんはいつも頑張ってるからね。」
「…てっきりこの一箱を総務部のみんなで分けるのかと。」
「大丈夫。配る用は、もうちょっと安めのお煎餅買ってきたから。あ、今の内緒ね。
保城ちゃんはこの美味しい温泉まんじゅう一箱、全部持って帰んなさい。」
「えー…、こんなに食べられますかね?」
「意外といけるいける。」
週明けの月曜日。
お昼休憩を終えて自分のデスクに戻ると、マゴの手で器用に右肩のツボを押さえつつ、和やかな笑顔のほむさんが隣の席に座ってきた。
そうして差し出された、
それなりに大きなお菓子の箱。
包装紙には味のある字で【絶品!温泉まんじゅう】と書かれている。
「温泉、最高だったなあ。」
「良いですね。」
ほむさんは先週末の土日を利用して、お孫さん達と1泊2日の温泉旅行へ出かけていたらしい。
わざわざお土産なんて良いのに、とお礼を言いながら箱の中身を他のみんなにも配ろうとしたら、これ一箱全部が私宛てだと言うから驚いてしまう。
「…こういうお土産は斬新ですね。」
「でしょ?日頃のご褒美兼ねたら、保城ちゃんへの饅頭はこんなもんじゃ足りないけどね。」
ほむさんは、いつだって大袈裟だ。
気恥ずかしくなりながらも「じゃあお言葉に甘えて。」と箱を抱きしめつつ笑うと、彼は満足そうに微笑んだ。
一人で食べるには、相当、数が多い。
あの男は、お饅頭なんて甘いものは
食べたりしないのだろうか。