アンチテーゼを振りかざせ
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「……あーーー、
まじで良い男、空から落ちてこないかな。」
「亜子は、落ちてきてもとりあえず踏むじゃん。」
「うっさいわね、何で知ってんのよ。」
……男を踏むってなんだろう。
生ビールのジョッキを持ったまま、じ、とそんな疑問と共に固まってしまった。
テーブルを挟んで、踏むだのなんだの語る2人の手には、ハイボールとレモンサワー。
顔がとても整っているそのコンビに、チラチラと周りのサラリーマンからの視線を感じる。
……この話の内容は聞こえていない方が良い。
「ちょ、紬さんドン引きしてる…!!」
固まって観察してしまっていた私に気づいたちひろさんが、すでに赤みを帯び始めた顔のまま焦ってそう言う。
「はあ?この程度で?」
彼女に肩を揺すられながら怪訝な顔のままこちらを見向くその女性は、まさに"正統派美人"。
そうしてばっちり私と視線を合わせた後、艷やかに笑い直して。
「…紬さん、そんなヤワじゃないでしょ。」
「亜子のその自信は何。」
「総務やってる女は、強いのよ。」
なんの根拠も無い、だけどやけに説得力のある言葉を吐いて、ね?と同調を求められ、思わず笑った。