アンチテーゼを振りかざせ


◻︎


「……紬、大丈夫…?」

「…うん。」



それから1週間後、行動力が凄まじい杏から「今週の土曜日、街コン申し込んだ」と事後報告で言われた時は驚いたけど。

意を決して訪れたそれが終わった後、私は相当な疲労感に全身をやられている。



「さすが、モテモテだったね。」

「…あれは、その表現で合ってるの?」

「た、たぶん?」



広めのレストランを貸し切って行われた街コンは、立食形式だった。

最初にプロフィールカードを書いて、テンションの高い司会者にフリータイムを告げられ、一斉に動き始める人達にたじろいたのも束の間。


"お話しませんか!?"

何故か私へと一直線にやって来た男性2人に拘束され、プロフィールを永遠と語られていたら、なんと終了時刻になっていた。



本当に、なんの時間だったのだろう。

表情筋も張り付いてしまってる気がする。


二次会行きましょう、と言われたのを丁重にお断りしてなんとか開放された今、



「…ビール飲みたい。」

「出た。」


心から漏れ出した本音にけらけらと笑う杏と、休日の活気あふれた人混みの流れの中で、駅へ向かって歩いている。


「街コンで飲めば良かったのに。」

「最初からビール持ってる女、嫌でしょ。」

「プロフィールカードも、趣味に"晩酌"って書かなかったんでしょ、どうせ。」

「書けるわけないじゃん…」


溜息を漏らしてそう言う私に、やはり杏は笑っていた。



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