アンチテーゼを振りかざせ
そして、配属されて2年目を迎えた。
「(あーーー面倒くさい!!!)」
私は誰も見ていないことを良いことに、顔を最上級に顰めたまま、デスクから離れた場所へ設置されている複合機へと近づく。
今日になって交わされた会話を思い出せば、舌打ちさえしそうになるけど、それはなんとか耐えた。
"…え!?"
"ごめんね急に〜、でもオフィスリニューアルの件、今のオフィスをよく理解してる総務部の人にもチームメンバーに入って欲しいって言われちゃって…"
"わ、私だってまだ2年目ですが…"
"保城さんは大丈夫!それにサポート的立場で良いらしいしね!今日もうこの後打ち合わせあるみたいだから、よろしくね!"
ははは!とふざけた笑いを置いて去っていったうちの課長に、もはや反論をする余地は無かった。
私が勤務しているこの本社ビルは、近々オフィスのリニューアルをする。
まあそれは別にありがたいことではあるけど、この話が上がった時、直感的に「あ、なんか巻き込まれそう」と嫌な予感をしてしまっていた。
総務部には、毎日色んな話が舞い込んでくる。
それこそコピー用紙が無いなんて日常的な話もあれば、オフィス内の空調温度なんとかしろだの、契約書の押印申請を早くしてくれだの、とにかく「ちょっとしたお困りごと」は、もれなくうちにやってくる。
それを裁きつつ日常業務をこなしている環境で、新しいプロジェクトへの参加なんて、本当に勘弁して欲しい。
"サポート的立場"ってなんなの。
こんな2年目の新人に近いような奴が急にチームに入っていって、サポートしますよ、なんて偉そうに言えるわけ無いじゃん。
現にもう、「総務が所有してる今のフロアマップとその他諸々の館内設備に関する資料を人数分冊子にしておいて欲しい」との調達依頼を受けている。
荒々しく、自分のPCから複合機へ飛ばしたデータを確認して、うちと先方のプロジェクトチームの人数分を印刷しようとボタンを押した時。
ピーーーー
なんて、複合機からトナーのインク切れを告げられる。