アンチテーゼを振りかざせ
These04.
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今日は、オフィス運営委員会でのミーティングがある。
瀬尾さんも来社される予定で、リーフレットの第2弾の内容を決定させる日だ。
アポイントの時間まで、容赦無く溜まっていく仕事をこなしながら、頭ではコンビニ店員との昨日の会話が思い出される。
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漸く涙が止まった頃、気まずくなった私はそのまま家へ帰ろうとしたのに。
ちょっと待って、と人懐っこい笑顔で言った男はコンビニへ入って、直ぐ戻ってきて。
「はい、これ。」
そうして差し出されるのは、缶ビールにサキイカ。
私の、黄金コンビ。
何故だか、簡単にまた泣けそうになる私は、相当弱ってしまっているらしい。
「……今日、貰う資格無い。」
「なんで。」
だって。
"良く頑張ったで賞"も、"話し相手になってくれてありがとう代"も、当てはまらない。
きゅ、と唇を噛んで俯くと、男は顔を覗き込んでくる。
そして。
「"明日も1日頑張れ"代、だけど。」
「…そんなの、もうなんでも言えるじゃん。」
「そうだよ、何でも良い。
紬に渡す理由が欲しいだけ。」
ストレート過ぎる言葉に、思わず絡めてしまった視線の先で三白眼が優しく細まる様を黙って見ていた。
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「……保城。」
記憶を辿る作業を遮るように名前を呼ばれて、反射的に視線を声の方へ向ける。
「香月さん。」
すぐ側に立っていた彼は、いつもと同じような優しい声ではあるけれど、表情は珍しく硬い。
リニューアルの件で何かあったのだろうかと、キーボードに手を置いたままに彼を見つめると「ちょっと話せる?」と、フロア外へ繋がるドアの方を指さした。