アンチテーゼを振りかざせ
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「昨日のこと、羽村さんに聞いた。」
「…そうですか。」
ほむさん、今日もいつもと何も変わらない笑顔で、さっきもお菓子タイムだってかりんとう渡してきたりして。
昨日のことには、特に触れてこなかったのに。
「トラブルになってたって、気づかなくて申し訳ない。」
落ち着いた声が、そう真っ直ぐ私に届けられる。
「…オフィス運営委員会は、香月さんの管轄外じゃないですか。」
「リニューアルと並行して動いてくれてるのに、無関係なんて思う訳がない。」
私は今、ちゃんと笑えてるだろうか。
この人がうちの課長とあまりに正反対の考え方を口にするから、簡単に動揺してしまう。
「……保城、後悔してる?」
「え?」
「昨日そんな風に言われて。
リーフレットで枡川さん達を取り上げなければ良かったって、思ってる?」
「……。」
直球のその質問は、私から言葉を奪う。
誰かに言われて、じゃなくて
あれは確かに自分の意志で動いたこと。
だからこそ、営業部からの意見は鋭く痛みが走った。
もう自分を晒したりしないと一度は誓ったけど。
____"紬が、選べばいい。"
どうしてかこのタイミングで、心に届くあの男の声。
____私は、本当は、どうしたい?