この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
何より、静に大きな変化があったからかもしれない。
和服は着なくなり、動きやすいカジュアルな洋服を好むようになった。
コンタクトも外し、青味がかった瞳を隠さなくなった。
ロスから帰った静は、よく喋るし、よく笑う。
輔は、あこがれの大和撫子だった静の変わりように始めは戸惑っていたが、
今では気安く付き合えて嬉しそうだ。居酒屋に三人で飲みに行くこともある。
「ところで、静、正月はどうするんだ?」
前園浩太が意味ありげに静に声を掛けた。
「うちのお袋が、良かったら町内の年越しに帰って来ないかって言ってたぞ。」
「うーん。どうしよう。」
「静さん、小宮家で賑やかに年越ししてもいいじゃない?
うちの社長たちと年越しそば食べようよ~。」
「どちらもステキなお誘いで決められないわ。考えておきま~す。」
以前とは比らべられないほどの、楽しそうな笑顔で静は答えた。
「おい、輔。わかってるんだろうな。」
「ハイハイ、せいぜい頑張ってね。」
輔は、浩太が完全には諦めていない事を知っている。
「何の話?」
「な、何でもないさ。夜食どうしようかなって…。」
「そうそう、気にしないで。」