この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


「この一年、どうしてた…。」

一番知りたかったことを竜平は尋ねた。

「私、ロサンゼルスに行ったの。昔の住所が偶然わかって…。」
「そうか…。」

「両親のお墓参りをして、母の兄妹…私の伯父さんと叔母さんに会いました。
 従兄弟も大勢いて… 私、天涯孤独じゃなかったのよ。」

「そうか…。」

「帰国してからは、幼馴染達に随分助けてもらいました。
 小さなマンションを買って…生まれて初めての独り暮らしをしています。」

静は晴れやかな顔をして、胸を張った。

「仕事だってしてるのよ。」

フフフッと笑いながら。

「フラワーアーティストとして働いてて、ちゃんと正社員になってるの。」
 
静は自慢げだ。世間知らずのお嬢さまでは無いとでも言いたいのだろう。
エプロン姿の静はずっと笑顔だ。竜平はそれが嬉しかった。

「そうか…。」

「竜平さん、そうか(・・・)しか言わないのね。」

チョッと顔を顰めたが、静は何が可笑しいのかまたニコニコと笑った。


竜平もやっと心からの笑顔を見せた。
目の前に幼い頃と変わらない笑顔の静がいる。その事がただ嬉しかった。

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